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ミュージカル映画は出だしが見どころ

2008年4月23日 Creatorsトーク

ハリウッドで活躍するフィルム・メイカーが、フェイヴァリット・ムービーとして挙げることが多い1939年の映画「オズの魔法使」(使いの"い"が送られていないのがミソ)。日常に潜む闇と不条理世界を描き続けるデイビッド・リンチでさえも、「オズの魔法使」へのオマージュである「ワイルド・アット・ハート」を作っちゃったし、カンヌ映画祭でグランプリ獲っちゃったし。そして今、劇団四季が公演している「ウィキッド」は、この「オズの魔法使」のアナザー・ストーリーでもあるわけで。

「オズの魔法使」が好きな人は、ミュージカル映画もたいてい好きです。
日本の映画ファンには、ミュージカル映画が苦手という人が割といますよね。急に歌い出してワケわかんないとか、展開がご都合主義だとかで。
この楽しさが分からないなんて、お気の毒さまと思う(失礼)のですが、僕だって小学校の時夢中で聞いていた淀川長治さんのラジオ番組で、これこそがエンターテイメントなんだ!という御指南がなければ、わけわかんねー派だったかもしれません。

歌と踊りで表現するミュージカルは、ストーリーラインは複雑でないながら、歌詞によってセリフのやりとりでは伝わりきれないキモチを表現しているので、内容は豊かなんです。
映画のクライマックスで用意されている見せ場とは別に、ミュージカルにはもうひとつの見せ場があるのです。それが、世界観を紹介するオープニングの曲。

ディズニー・アニメの「美女と野獣」は、アニメながらアカデミー作品賞にノミネートされた名作ですが、この作品のオープニングの曲を思い出してください。
主人公のベルがどんな娘で、どんな父親と住んでいて、村の人々とどんな関係にあって、その村のどこにベルが住んでいて、という普通のドラマなら15分以上はかかるであろう舞台設定を、歌の力でたった1曲で分からせてしまう見事さ。
「サウンド・オブ・ミュージック」の豊かなアルプスの山々の景色から、丘の上でひとり広い世界に向かって歌うマリアの姿へカメラが近づいていく印象的なオープニング。
「ウエスト・サイド物語」のクールな若者たちの抗争関係と街の様子がリズミカルなカットでつながれ、この映画のスタイルに一気に観客を引き込むオープニング。
ミュージカルは、出だしの掴みがとにかく大事。

名作ミュージカルとして語られることはない「ビギナーズ」という作品も、オープニングはやたらカッコいいです。
50年代のロンドン・ソーホーに集まる若者の群像劇なんだけど、写真家をめざす青年の靴のアップからはじまり、1カットで若者がストリートを移動する姿を追いかけつつ、街にいる当時のカルチャー全開な人たちや主要人物の紹介、街の構造を一気に見せていくわけ。
残念ながら作品の評価は散々なのですが、デビッド・ボウイーやスタイル・カウンシルの参加したサントラ版はいまだ人気があるようです。

さて、冒頭に書いた「オズの魔法使」。
オープニングはミュージカルではありません。白黒画面の田舎に住む少女を主人公にしたホームドラマ風。この白黒パートで唯一歌われる「虹のかなたに」は、「オズの魔法使」という作品を知らなくても、日本でも平井堅やUAがカバーして歌っているから聞いたことがあるかもしれませんね。
この平和な田舎に竜巻が襲ってきて、主人公のドロシーは家もろとも飛ばされてしまいます。気を失っていたドロシーが、おそるおそる家のドアを明けて外をみてみると…。
白黒画面のドアの向こうは総天然色のマンチキンの街(すごい数の小人さんたちが集められたそうです)。そこでおうちに帰る願いを叶えてもらおうとオズ大王にお願いするため、黄色いレンガの道を歩いていこう!と歌うのが、ミュージカルとしてのオープニングになるのです。

近年のミュージカル映画は、ミュージック・ビデオとの混血によって、音楽映画というジャンルになってしまいました。またブロードウェイのヒット作を映画化するパターンが多いですね。
そんな中でも、映画マニアなフィルム・メーカーであるティム・バートンの作品、「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」「スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」は、往年のミュージカル・スタイルにのっとって、出だしの1曲で舞台設定と主要人物がわかる絶妙な展開になっています。

written by TZK:アイデアビューロー・Webチームのアートディレクター。学生時代「オズの魔法使」の悪い魔女に笑い顔が似ていると言われたことがある(笑)

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